マルバアサガオ(Ipomoea purpurea)
欧米で園芸植物化されたアサガオの近縁種である。アサガオと比べると花や葉がやや小型で、種子も小型で、花も房咲きになり結実すると下に向く。また、花 のしおれる時間は早い。和名のとおり、標準的な系統の葉は翼片のない心臓形をしている。低温期でも生育を続けるため、日本では長野県や北海道でよく栽培されている。これは耐寒性が強いというよりも、アサガオと比べまだ温帯地域に適応していな いためだと考えられ、晩咲きの品種もある。日本へは江戸初期に長崎に導入され、東浦塞牽牛花(かんぼちゃあさがお)、福岡では八つ房と呼ばれていたという。
アサガオに次いで品種(変異)の種類が多く、特に法政大学の笠原基知冶が変異体のスクリーニングと保存を 行ったため、日本の方が変異リソースは潤沢である。また、アサガオの変異体と類似、または同じ遺伝子の変異体がいくつも知られており興味深い。
九大の系統番号では Q7~Q100、Q1101~Q1200、Q2001-Q2200、QK1-QK350の番号を割り振っている。
左から、初めて見つかったマルバアサガオの牡丹咲き(笠原系)、アサガオには見られない条斑点絞、青みが強い野生型、アサガオの笹に相当する遺伝子の変異体、アサガオの台咲に類似する変異体
アメリカアサガオ(Ipomoea hederacea)
日本へは戦後の救援物資とともに入ってきたと考えられており、帰化植物化している。花はアサガオより小型で、葉は5裂または3裂し深く切れ込んだヘデラセア葉をしている。学名もツタ(Hedera)の葉に似ていることに由来する。ただし、翼片の無い丸葉の変種もよく見られる。アサガオに最も近縁の種で、ア サガオとも低い確率であるが交配可能で、遺伝子マッピングの目的でも用いられている。
左;Q65 標準的なヘデラセア葉、右;Q66 丸葉の系統。
若名英治の朝顔の研究(第1巻7号;明治35年、1902)に芝罘産あさがほ(チーフー;中国山東省)として記載されている種はアメリカアサガオだと考えられ、若名氏もアサガオ(I. nil)とアメリカアサガオ(パープユリア;マルバアサガオ?)の中間に相当する種ではないかと推測している。また、同じ系統は小川信太郎氏の著書にも出てくる。ちなみに若名氏は、アサガオの原種として、北京種(のちに木原均が北京で採集した北京天壇とは異なる)も保有しており比較を行っている。
朝顔の研究(第1巻7号;明治35年、1902)、禹長春コレクションより(リンク先を参照)
ノアサガオ(Ipomoea indica)
アサガオに近縁の植物であるが、多年生(宿根性)であり、強い自家不和合性を示すため、系統間交雑でないと種子を付けない。日本では、南西諸島から、九州、四国、紀伊半島の太平洋岸に分布する。園芸的に利用されている大輪、濃色の系統は主に外国産のノアサガオで、先にヨーロッパでI. acuminata等 称して利用されていた。支柱によじ登る通常のシュートと、重力屈性を欠き、発根部がある匍匐シュートを生じ、後者によって生育域を拡大する。温暖な地方では駆除困難な有害植物となるため、植える場所に注意が必要である。
一部は系統間交雑による種子で保存しているが、基本的には栄養生殖クローン(苗)で供給できる。
様々なノアサガオの花。上段左から、ノアサガオ(沖縄産;野生型)、白花、ピンク花、下段左から、オーシャンブルー、ケープタウンスカイ、由来不詳の3尖葉の系統。