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禹長春(Nagaharu U/Jang-choon Woo)コレクションについて

 

育種学者/遺伝学者である禹長春博士(日本名 須永長春)は、Brassica(アブラナ)属の種の成り立ちを明らかにした研究である、U's triangle禹の三角形)で世界的に知られています。世界に先駆けて、新しい種が既存の2倍体の種が交雑し複2倍体を作ることで生じたことを示し、その後の遺伝学や育種学の研究者に多大な影響を与えています。禹長春博士が、農林省農事試験場鴻巣試験地(現埼玉県鴻巣市)でこの研究を始める前にアサガオを使った易変性遺伝子(MAPLEの各種アレル等)の研究に取り組んでいたことはそれほど知られていないかもしれません。
 禹博士の父君、禹模範善氏は韓国の政変に巻き込まれることになり、日本へ亡命し、禹博士は日本で生まれ、京都帝国大学等で教育を受けました。農事試験場でアサガオを研究し書き上げた博士論文は、残念ながら試験場の火災で焼失してしまいましたが、そこから材料をアブラナ属の植物に変えて前述した偉大な研究成果を得たのです。また、最近苗で供給されることでよく見るようになった八重咲きのペチュニアも禹博士がタキイ種苗において100%出現する方法を開発したのです。
  戦後、韓国の作物育種が壊滅的な状況にあり、時の大統領に請われて韓国に渡り、韓国では育種の父と言われて尊敬を集めており、記念館も設立されています。このあたりの経緯は、角田房子氏の著書に詳しく書かれています。
 禹博士が研究したアサガオの資料は残っていないと思っていましたが、2014年の夏、変化朝顔研究会に仲介していただき、資料を引き継いでいた金田忠吉氏、須永元春氏より、貴重な資料を見せていただくことができました。全ての資料は近々韓国の記念館に引き渡すとのことでしたが、日本語と英語のみで書かれた資料が韓国に渡り、展示品として埋もれてしまうのは惜しいと思い、九州大学でデジタル化を進めました。資料は交配実験の記録をした野帳、腊葉(さくよう)標本、アサガオの会報等(明治〜大正期)等膨大な量ありますが、金田・須永両氏の許諾も得ましたので公開に向けて準備をしております。

既に若名氏の資料等で一部使わせていただいているものがありますが、禹長春コレクションと明記しており、使用許諾については私が仲介する形で金田・須永氏の許諾を申請したいと思います。

資料の例


左;現在では失われた易変性松葉(maple-pine-mutable)。現存のものはフットプリント化しており復帰は起こさないため。右;ノート:種子色の復帰変異についてアイディアを綴っている(全てを通じてとにかくきれいで丁寧です)。

 

資料リスト(PDFファイル)

朝顔会報(明治後期〜大正)
野帳・アサガオ変異体の腊葉標本

文献

角田房子(1994)わが祖国―禹博士の運命の種(新潮文庫), 新潮社

U, N. (1922) On the distinguishableness of some races of morning glory according to their seedcharacters. Jpn. J. Genet. 1:101-106. 種子によって鑑別できるアサガオの変異体(燕)について。
U, N. (1930) On the recurring mutation of pine type of morning glory. Jpn. J. Genet. 6:199-202. 易変性松葉について。末尾に資料の焼失の件が書かれていて痛ましい。

U, N. (1930) On the appearance of a haploid in the Japanese morning glory,Pharbitis Nil,Chois. Jpn. J. Genet. 6:203-204. 半数体アサガオについて。同様に資料が焼失したとある。

U, N. (1932) On the reappearance of haploid in the Japanese morning glory. Jpn. J. Bot. 6:225-243. 半数体アサガオについて(写真付き;播種後再度記録を取ったのであろう)

Nagaharu U (1935) Genome analysis in Brassica with special reference to the experimental formation of B. napus and peculiar mode of fertilization. Jpn. J. of Botany 7: 389–452 .

 

 

 

 

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