栽培のしおり(web版) 

お送りした出物系統は全て出物が出ることをテストしていますので、たまたま出物が出なくても、今年は出物を隠し持っている親木を有る程度の本数栽培すれば必ず来年には出ます。

以下、栽培の重要なポイントだけを書いておきます。

系統番号について:頒布者ごとのリストはつけておりません。しかし、系統番号(Q629など)は当研究室固有の番号ですので、この番号ごとに記録があり、花銘・特性などを知ることができます。系統ごとの詳しい情報は以下のURLを参照されてください。また種子が殖えて人にあげるときは、必ずこのQで始まる系統番号を添えてください。

系統リスト2009(文書情報):ピンク、水色背景のものは種子残り数が少ない系統です。

画像カタログ2006

NBRPのページ(2005更新)またこのページで遺伝子型、表現型(花銘)等による検索ができます。
その系統が持つ突然変異によって分類した系統画像カタログ(2005更新)

栽培のポイントのポイント(Quick Tour)

1)種を播く前にかならずカッター、メス、ハサミ、爪切り等で種皮の一部にわずかに中の白い部分が覗く程度に傷をつける(芽きり)。一晩水に漬ける等は全く必要ない。

2)芽が出てきたら、種皮を自力でのぞけないものが出るため、水やりして皮がやわらかくなった時にていねいに取り除く。

3)種子のできる正木系統は、普通のアサガオと全く同じように栽培できますし、採った種から毎年同じ花が咲きます。

4)出物系統(鑑賞用の種のできないアサガオが播いた種の一部から出る系統: 系統リストのdp・出物の項目に記載があります;それ以外は正木です)は、もらった種子を全部播く。全体の4分の1程度の子葉(双葉)が他のと違う形(出物;でもの)になり、これを分けて鑑賞用に栽培する。それ以外は種とり用のアサガオ(親木;おやき)となり、株別に支柱を分けて植えて、別の株の蔓と絡まないように管理して、株ごとに分けて種をとる。一部は、牡丹咲(八重の強いもの=親牡丹)になり、これからは種が取れない。

株ごとにとった種子を翌年、30−50粒づつ播いて、そのうち、出物と牡丹咲(八重の強いもの)が再び出る株の苗だけのこして維持していく(テスト播きと称して、あらかじめ10−15粒程度播いて出物と牡丹咲が出ることを確認した方が効率はよい)

特に出物系統を注文した方は以下の栽培のポイント、別項の栽培の方法を必ず良く読んだ上で、原理を理解した上で栽培されてください。

栽培のポイント:変化朝顔の栽培自体は普通のアサガオと全く変わりなく、易しいものです。ただ出物(後述)は成長が遅いものが多いため、開花まで時間がかかります。変化朝顔は栽培・維持上、“正木(まさき)”と“出物(でもの)”に分けることができます。正木は播いた種子の全てが同じ花を咲かせ、種子もできるため維持も容易です。一方、出物はアサガオに見えないような変わった葉や花を持つもので、種子ができません。400番代と600番台,500番代の一部、837,956,1089-1099等の系統番号は出物系統で、出物を隠し持った(ヘテロ接合)状態で維持しており、播いた種子の1/4〜1/16の確率で出物(ホモ接合の突然変異体)が分離してきます。これらは種子ができないため、兄弟株の、一見正常に見える親木によって採種します。獅子咲牡丹、采咲牡丹、車咲牡丹では、1/4の確率で子葉の変わった、葉出物が出て、そのうちの1/4が牡丹咲きの牡丹出物、つまり1/16の確率で観賞用の高級出物が出ます。采咲、渦こびとなど単純な系統や、牡丹抜けと書かれている系統は、1/4の確率で出物が出ます。

1) 変化朝顔では、子葉の段階で鑑別するため、発芽を揃える必要があります。アサガオの種子は固く水を吸わないため、面倒でも、種を播く前に“必ず”、ハサミ、爪切り、ヤスリなどで、種子の一部を中の胚乳(白い部分)が少し見えるくらいに傷をつけてください(芽切り)。一般に言われている、水に一晩つけて播く等は手間がかかりますし、芽きりしておけばやる必要がありません。逆に芽きりをせず、水につけて播いても吸水できず発芽しないものが必ず出ます。

2) 種は川砂・バーミキュライト等の無肥料の播床に播いて、発芽後、小鉢に移植します。また、直接鉢に市販の草花用の培養土を入れて播いてもかまいません。時期は、暖かくなる5月以降に種を播いてください。また遅くとも7月中には播いてください。6月に播いても5月に播いたものにすぐに成長が追いつきますので、それほど開花時期に差はありません。今年播けない種子は密封容器(タッパーウエア)や、ファスナー付ビニール袋(ジップロック等)に入れて、普通の冷蔵庫(4度)に入れておけば数年は保存できます(間違っても冷凍庫には入れないでください。凍って種子が死んでしまいます)。出物系統の種子は上記の出物の出現率に応じた数をまいてください。たくさん送っているのには意味がありますので、たくさんあるからといって人にあげたりせず、全部播いてみて、出物の全部と親木の一部を栽培してください。 ただし、出物に関しては必ずしも必要数送っておりません。出物が出ることを確認済みの種子を送っていますので、今年出物が出なくても普通に見える親木から種子を株別に採ってこの種子を来年播くと必ず出物が出ます。

3) 発芽してきたら、水やりして種皮が柔らかくなった後に、種皮をかぶったものを丁寧に取り除いてください。特に600番代の采咲系統や燕(つばめ)の出物は子葉が小さいため、自力では種皮をのぞけないことが多いので放置しておくと枯れてしまいます。

4) 移植は子葉が展開してすぐにした方が苗が痛みません。移植が遅れた場合は、根のまわりの土をできるだけつけて移植してください。

5) 正木系統(以下の出物系統以外の系統)では、播いた種子のほとんどが鑑賞用ですし種子ができるため、普通のアサガオのように栽培できます。ただし、発芽した子葉が他と違う野生型の子葉のものは、交雑したものですので、抜き捨ててください。

出物系統(Q401~Q473、Q515, Q518, Q521、Q601~683、Q1089-1099 など)から出てくる違う形の子葉をもつ出物(下の写真参照)は観賞用の出物なので、親木と別にして、大切に育ててください。

500番台は種とり用の親木と牡丹咲の鑑賞用の出物の2種類しか分離しないため、子葉は全部同じ形です。600番代の采咲系統の出物は、小型で子葉の股を開くことが多いです。牡丹咲は蕾がつくまでわかりません。以下写真をクリックすると咲いた花の画像を表示します。
400番代の獅子咲系統の出物(右)は抱えて、全体にゆがんでいます。これが獅子になり、蕾が付くとわかりますが、そのうち4分の1程度が鑑賞用の獅子咲牡丹になります(残りは獅子咲です)。左の親木のうち、本葉の抱えのできるだけ強いもの(獅子を隠し持つ=ヘテロの親木)を選び、そのうち牡丹咲でないものを5本以上選んで植えて、株ごとに採種します。また一部の系統(系統リストにfe/coなどと書いているもの)は、丸葉になったものは、獅子が抜けてしまった親木ですので、廃棄します。その原理は次のページに書いています。

600番台の柳出物(右)は子葉が細く股を開いています。そのうち4分の1程度が鑑賞用の(撫子)采咲牡丹になります(残りは采咲ですが、有る程度鑑賞価値があります)。左の親木のうち牡丹咲でないものを5−10本選び、株ごとに採種します。

600番台の笹親木の糸柳系統の、柳出物(右)は子葉が細く抱えています。そのうち4分の1程度が鑑賞用の細切采咲牡丹になります(残りの一重咲きは鑑賞価値が低いので廃棄します)。左の親木のうち牡丹咲でない、笹の切咲一重のものを5−10本選び、株ごとに採種します。

 600番台の一部の糸柳牡丹系統(Q654, Q661, Q662など)は、並葉親ですので、子葉は上記の4種類の子葉が分離してきます。本来は糸柳(右)だけ高級出物と呼ばれる鑑賞用の株ですが、柳出物(右から2つ目)を保存しておいて鑑賞してもよいでしょう。左から2つ目の笹はほとんど種ができないので、親木には使えません。そのため、一番左の並葉親木のうち牡丹咲でない、丸咲のものを10本以上選び、株ごとに採種します。初心者の方にはほとんど栽培維持が困難な系統群ですが、もらったからには気合いを入れて頑張ってたくさん育てましょう。笹や燕の入った獅子系統(Q419, Q456など)も同様に、並葉・笹・獅子・笹獅子、または 並葉、燕、獅子、燕獅子が分離してきますが、並葉親木を採種用に保存します。ただし、獅子を持っている親木が鑑別できますので(前述)、このクラスの糸柳牡丹より維持は難しくはありません。

1089, 1093などの縮緬親木、車咲牡丹系統の車咲出物(右)は子葉がやや細く平行になり、葉脈が目立ちます(初心者には一番鑑別が難しいクラスです)。そのうち4分の1程度が鑑賞用の車咲牡丹になります(残りの一重咲きは一重の車咲です)。左の親木のうち牡丹咲でない、縮緬葉台咲のものを5−10本選び、株ごとに採種します。

他にもいろいろな分離パターンを示す系統がありますが、子葉のころからよく観察して、2種類に分離するものでは、正常な子葉が親木、形が変わったものが出物、4種類に分離するものでは、一番多い並葉のものが親木で、一番少ないものが出物です。

6) 上記の出物からは種子ができないため、親木を“株ごとに分けて”植えて番号(または記号)をつけて採種してください。獅子咲の親木だけは、抱えが強いので、出物抜けの親木と区別することができます。最初の年に出物が出なくても、あきらめず親木の種子を採って来年まけば多くの場合出物がでます。獅子咲牡丹系統で、最低でも3−5本、采咲牡丹や車咲牡丹系統では、5−7本の親木を栽培しないと獅子・柳・牡丹などが抜けてしまいます。

7) 次の年に株ごとに分けて種を播いて、出物が出てくる親木の種子だけを残して系統を維持してください。事前にテスト播きと称する、出物や牡丹が出るかテストしておくと翌年の栽培が非常に効率的になります。

もしこれらの系統が殖えて、人にあげる場合は、系統番号は必ず附記されるようにお願いします。系統についてのお問い合わせはアサガオ掲示板または電子メールでお願いします。開花報告なども大歓迎です。もし変わった系統や交配で作った面白いなどお持ちでしたら是非お譲りください。

〒812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1
九州大学大学院理学研究院 生物科学部門 染色体機能学研究室
仁田坂 英二
e-mail:
enitascb@mbox.nc.kyushu-u.ac.jp
ホームページ:http://mg.biology.kyushu-u.ac.jp/


この図は、牡丹出物株(獅子咲牡丹、采咲牡丹、車咲牡丹等)で最初から葉出物と牡丹出物が出ると分かっている株からの栽培の例です。

この後株毎に採種したものを翌年播きますが、葉出物が出ない株の苗は「出物抜け(出物が逃げた)」と称して全部廃棄し、葉出物が出るものだけ残して栽培します。また牡丹探りでも同様に牡丹が出ないものは「牡丹抜け」と称して同様に廃棄し、最終的には葉出物と牡丹出物の両方が出るものを採種します。このように葉出物、牡丹出物が出るか分からない種子を栽培すると手間がかかりますので、事前に小規模に栽培してテスト(テスト播き)しておくと翌年の栽培の手間が大幅に減ります。当方で配布している出物種子はテスト済みですので、安心して育てることができます。もし牡丹出物が出なくても、親木を栽培し、株毎に採種すれば翌年必ず牡丹出物が出ます。