アサガオの生理学
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アサガオ花成生理学実験法
花芽の判定と花成反応の評価

 花芽と葉芽の識別と、花成反応の評価は次のようにして行う。


花芽と葉芽の識別

1. 芽生えの主茎の長さ(子葉の付け根から茎の先端までの長さ)を物差しを使ってmm単位で測定し、栄養成長の指標とする。

2. 一番下の本葉(第1葉)から始めて、全ての本葉の付け根(葉腋)を実体顕微鏡の下で観察し、腋芽を柄付針で解剖して、葉芽であるか花芽であるか、あるいは芽は無かったかを記録する。
 発達した葉芽では葉原基に葉脈が見られ、発達した花芽では2個の苞葉、5個の萼片、5個の花弁、5個の雄ずい、3個の心皮(3個の心皮が後に合着して1個の雌ずいを形成する)がこの順序で同心円状に配列しているので、互いに見誤ることはない。
 未発達の葉芽と花芽は次の特徴によって識別する。葉芽は全体として細長く、同形だが大きさの異なる数個の葉原基から成る。一つ一つの葉原基は細長く、ほとんど湾曲せず、葉原基自身よりも長い毛が生えている。それに対して、花芽は全体として丸く、2つの同形、同大で、細長い、内側に湾曲した苞葉原基に挟まれて、同形、同大の丸い萼片原基が円周上に等間隔に並んでいる。毛は苞葉原基、萼片原基自身よりも短い。
 さらに未発達の花芽で、萼片原基の数が5個未満のときは、萼片原基間に大きさの差があり、2個の苞葉原基との相違も明瞭ではないが、全体として丸く、毛が短いという特徴はすでに備えている。
 より未発達の段階で、2個の葉原基だけから成る葉芽と2個の苞葉原基だけから成る花芽は次のようにして識別する。2個の原基の大きさが異なり、原基の先端が細く、基部にくびれ込みが無く、ほとんど湾曲せず、原基自身よりも長い毛があれば葉芽である。一方、2個の原基が同大で、原基の先端が丸く、基部にくびれ込みがあり、内側に湾曲し、原基自身よりも短い毛があれば花芽である。葉または苞葉の原基が1個しか形成されていない段階でも、これらの特徴が認められれば識別できる。しかし、判定に迷いがあるときは、識別不能と記録するのが無難である。

頂花芽の識別

 茎の先端部の葉は未発達で、葉原基の発生段階にあり、これらの葉原基の葉腋にはまだ葉芽も花芽も分化していない。このような、葉腋に葉芽も花芽も分化していない葉原基がいくつあるかも記録する。通常、このような葉原基の数は5個程度である。このような葉原基の集まりが無く、茎頂分裂組織が1個の頂花となっていることもある。このときは頂花と記録する。
 茎先端の葉原基の集まりと1個の頂花は識別しにくいので注意を要する。葉原基の集まりである場合は、5個前後の葉原基からなる。これらの原基は同形であるが、先端(中心)に近いものほど小さくなる。大きい原基は、細長く、長い毛が生えている。一方、1個の頂花である場合は、一つ一つの葉原基と見えるものは1個の花芽を形成する苞葉または萼片の原基である。苞葉原基は2個、萼片原基は5個なので、8個以上の原基があるなら、内側のものは花弁の原基であり、原基の集まりは1個の花芽であると判定できる。花弁原基まで発生していれば、葉原基の集まりからの識別は難しくない。
 葉原基あるいは苞葉・萼片原基と見えるものの数が7個以下の場合、中心に近い原基ほど小さく、長い毛が生えていれば、前述の通り、葉原基の集まりである。これに対して、外側の2個が他よりやや大きく、互いに同大で、それら以外の、より小さい数個が互いにほぼ同大で、毛が無いか、あっても短ければ、頂花であると判定できる。

花成反応の評価

 全ての個体の全ての芽について花芽と葉芽を識別し、その数を記録したら、以下のようにしてデータをまとめる。

(1) 1個でも花芽を形成した個体は花成を誘導された個体と見なし、全個体のうちで花成を誘導された個体の占める%を求めて、花成率とする。
(2) 全個体のうちで頂花を形成した個体の占める%を求めて、頂花花成率とする。
(3) 1個体に形成された花芽数の全個体における平均値±標準誤差を求めて、個体当りの花芽数とする。花成を誘導されなかった個体も、花芽数0として計算に含める。
以上3つの値を花成反応の強さの指標とする。
(4) 最初の花芽が形成された位置が下から数えて何番目の節に当たるかを第1花形成節位とし、この値の全個体における平均値±標準誤差を求めることも有益なことがある。この場合は花芽が形成された個体のみを対象とする。
 アサガオは下の節から順次花芽を形成してゆくので、この値が小さいほど、早い時期に花成が誘導されたことを意味する。

 1個体に形成された花芽数と葉芽数の和(腋芽が形成されていない葉腋(節)は無視する)の全個体における平均値±標準誤差を個体当りの全芽数とし、茎長の全個体における平均値±標準誤差とともに栄養成長の指標とする。 栄養成長は影響されずに花成反応に影響が見られれば、それは花成に対する特異的な効果であると推定できる。栄養成長への影響が大きいときは、花成反応に影響が見られても、栄養成長の促進または阻害を介した二次的な影響である可能性を排除できない。


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