近年、フロリゲンと呼ぶべき特殊な物質は無く、既知の植物ホルモンや同化産物を含む多数の要因が整ったときに花芽がつくられるとする多要因説が支持を集めている。
カラシでは、サイトカイニン、プトレシン、ショ糖、Ca++は、いずれも、花成誘導条件下の葉で増加し、頂芽へ移動する。これらの全てが揃ったときに花成が起こるという考えが多要因説である。最終的な複合物がそろった時点で同時に機能するというより、複数の要因が順次にそれぞれに機能して行くと考える。種によって異なる物質群が多要因として機能する。カルスのシュート形成、根形成は、それぞれを誘導する特別な物質があるわけではなく、オーキシン濃度とサイトカイニン濃度のバランスで決まる。同じように、花成も特別な物質ではなく、既知の物質のバランスで決まる可能性は考えうる。多要因説は、ショ糖やサイトカイニンを細胞周期を短縮する要因と考え、プトレシンとCa++には細胞分裂におけるサイトカイニンの共同要因やセカンドメッセンジャとしての役割をあげている。
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