アサガオの野生型・アサガオの近縁種

 アサガオ (学名:Ipomoea nilまたはPharbitis nil)は、日本原産の植物ではなく、今から1200年ほど前、遣唐使によって中国から薬草(下剤)として渡来したと考えられている。日本に渡来した当初のアサガオは青い丸咲きで3つの尖った翼片をもつ常葉(並葉とも呼ばれる)だったと思われる。このことは異なる系統間の雑種第一代がこのような青い丸咲きであることからも伺い知ることができる。
 日本のアサガオの起源を探る試みは様々な人によって行われ、世界中から地域品種が採集されている。最近の遺伝子解析の結果は、中国で採集された北京天壇系統が日本のアサガオに最も近いということを示しており、これは歴史的事実とも一致している。またアフリカ系アサガオはどの系統よりもアサガオ近縁の植物に近く、アサガオは本来アフリカなどの熱帯起源であり、これがアジアなど全世界に広がっていったと考えられる。

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アサガオ(Ipomoea nil)

東京古型標準型(TKS)

竹中要氏によって選抜され自殖が繰り返された系統。淡青色の花を咲かせ、日本に8世紀ごろ渡来してきた系統はこのようなものであったと思われる。

 

北京天壇

1938年に木原均氏によって北京近郊の天壇で採集された系統。表現型は日本のものとほとんど同じであるが、高緯度に適応しているためか早咲きで枯れるのも早い。また花がしおれるもの非常にはやい。

 

ネパール系

京都大学のネパール・ヒマラヤ探検隊の中尾佐助氏によって1952年にネパールで採集された系統。やや遅咲きで高温に弱く葉焼けしやすい。葉の切れ込みがやや深い。

 

アフリカ系

古里和夫氏によって1956年アフリカのギニアで採集された系統。性質は強健であるが、非常に遅咲きで9月下旬以降にしか咲かない。葉は切れ込みが浅くやや波打つ。花は他のアサガオの野生型に比べて淡く、空色である。分子系統学的解析からも他のアサガオ系統よりもアメリカアサガオやマルバアサガオに近く、これらと交雑可能である。ほとんど同じ形態のブラジル系とよばれるアサガオがある。

 

アメリカアサガオ(Ipomoea hederacea)

熱帯アメリカ原産。非常に早咲きで小型の淡青色の花を咲かせる。ヘデラセア葉と呼ばれる切れ込みの深いくびれた葉を持ちしばしば五裂する。また萼は外に反転していており、アサガオとは低い率であるが交雑可能で、これらの葉や萼の形質はアサガオに対して優性である。日本には戦後の救援物資とともに急速に広がったといわれ各地で帰化している。葉が丸葉のタイプもしばしば見かける。園芸的にはほとんど利用されていない。さく果が熟すとすぐにこぼれるのも研究材料としてはやや使いにくい。


アメリカアサガオのヘデラセア葉タイプ(標準型)と丸葉タイプ

 

マルバアサガオ(Ipomoea purpurea)
熱帯アメリカ原産で英名、Common morning gloryの名からもわかるように欧米でアサガオといえばこの種をさす。花はアサガオよりやや小輪で、写真のような花色が野生型だと思われる。園芸化が進んでおり様々な花色、模様のものが存在する。葉は日本名からもわかるように心臓型の葉でアサガオのような3尖葉のタイプもある。日本へは寛永年間に入ってきたようでカボチャアサガオ(カンボジア由来?)と呼ばれており、その後明治期にも再度輸入された記録が残っている。アサガオより冷涼な気候に耐え、つるの絡まる性質もつよい。アサガオと異なり、受粉後さく果が下を向き、種子、子葉ともアサガオと比べてかなり小型である。アサガオとは交雑できないがアフリカ系は低い率ではあるが交雑する。

 

ノアサガオ(Ipomoea indica)
亜熱帯性で全世界的に分布する。日本では紀伊半島から四国南岸、九州南部、沖縄諸島の海岸に近い地域に分布する。多年性で10m以上の匍匐茎をのばし、青紫の中輪花を咲かせる。葉は主に心臓型の葉でアサガオのような3尖葉のタイプもある。自家不和合性でほとんど結実せず花も余り咲かせないことがある。

自生している様子。宮崎の鵜戸神宮で撮影。

西表島