連鎖地図(Linkage map)
アサガオの古典地図
1956年に萩原によってそれまで研究された219の遺伝子座について連鎖地図がまとめられている。それらのうち、マッピングされた遺伝子が71遺伝子座、75が連関群のみ明らかになっている。のこりの73については連関群は不明である。元となったデータは主として、今井、萩原によって突然変異系統の交配実験によって求められた組換え率に基づくものである。突然変異系統同士を交配し、F1植物を自殖させてF2での分離を計数し組換え率を求めているが、具体的なデータを見ると精度は遺伝子座によってまちまちであると考えれる。特に、後述の相引(coupling)の場合、2重劣性個体の分離数が少なく不正確である。アサガオの染色体数は2n=30であることから、連関群は15あると考えられるが、10群までのマップしかできておらず、第1〜第5群まではあるていどの遺伝子座が乗っているが、6から10群まではそれぞれ、わずか2,3の遺伝子座しかマップされていない。また彼らがマッピングに用いた系統はほとんど保存されておらず、同義的な遺伝子のない遺伝子は対応がつくが、類似の形質に関して複数の遺伝子が知られているものに関しては対立性や連関群の再検定を行う必要がある。例えば牡丹、立田、南天、笹など主要な突然変異は他に類似のものが知られていないため問題ないが、花色、模様、葉形に関するものでは複数の遺伝子座の突然変異体が同一の表現型を示すのでやっかいである。
上の地図に今井らのデータを加えてより詳細にした連鎖地図(Nitasaka
unpublished)
染色体数から15の連関群があると予想されるが明らかになっているのは10群だけである。また、それぞれの連関群にのっている代表的な遺伝子の名称で呼ぶこともある。
1 variegated 斑入、2
cordate 丸葉、3 yellow
黄葉、4 acuminate
南天、5 contracted
渦、6 duplicated
牡丹、7 retracted
州浜、8 pear 孔雀、9
delicate 笹、10 duskish
偽柿
表現型マーカーを用いて組換価を求める方法はおおよそ以下のようにおこなっていた。
まず、マップしたい突然変異系統を交配する。この場合マップする突然変異形質が仮に劣性だとする。片方の親がa
b/a
bのようにマップする劣性形質2つについてホモ接合で、もう一方の親が+
+/+ +のように野生型対立遺伝子がホモ接合になっている場合、F1は、a b/+
+の様な遺伝子型になる(coupling、相引という)。また逆に親がa +/a +と+
b/+ bでF1がa +/+
bのようになる場合(repulsion、相反という)もあり両者で結果が違ってくる。
F1個体を自殖するが、couplingの場合、配偶子の比率は++, abがそれぞれ(1-r)/2、a+, +bがそれぞれr/2となる。ここでrは組換率で、各配偶子の合計は1となる。F2世代では[++], [+b], [a+], {ab]がそれぞれ、(r2-2r+3)/4, (2r-r2)/4,
(2r-r2)/4,
(1-r)2/4の割合で分離してくる。ここで組換率を求めるための値Xを組換個体/非組換個体で定義するとX
=
((2r-r2)2)/((1-r)2*(r2-2r+3))となる。
Repulsionの場合、配偶子の比率は++, abがそれぞれr/2、a+, +bがそれぞれ(1-r)/2となる。F2世代では[++], [+b], [a+], {ab]がそれぞれ、(r^2+2)/4,
(1-r)2/4, (1-r)2/4,
r2/4の割合で分離してくる。ここで組換率を求めるための値Xを組換個体/非組換個体で定義するとX
=
(r2*(r2+2))/((1-r)2)2となる。
これらのXの値からrは一義的に決まるわけであり、これをいちいち解かなくてすむようにImmer & Hendersonの表などがある。repulsion の場合、[ab]のクラスが少ないのでcoupling と比べて不正確である。
現在ではMapMaker等の便利なマッピングソフトウエアがあるためこれらで計算すると正確な値とLODスコアがでるので信頼度もはっきりする。