変化朝顔の花銘について


変化渦南天葉極黄菊形数切牡丹度咲(朝顔三十六花撰より)

一見煩雑に見える変化朝顔の花銘も一定のルールがあり、名称だけでその花を見なくてもおおよその形を推測することができる。以下にそのルールを示す。赤字で示した部分は伝統的な方法ではないが、私が推奨しているしている部分である。

基本的な表記の順番は(全草におよぶ性質)・葉・茎・花でそれぞれについて細かく表記する。細目は以下の順番になっている。

全草に及ぶ性質:

ここに書くべきものは、突然変異体が多面発現を示すために全部草におよぶもので、個別に葉・花を記述しても良いが、最初に書いておくと草姿を想像するのに便利なものは書くようにする。特に燕(miniature)、姫など全体が小型になるものや、手長(deformed; 絶種)など全草が乱れるものなど。 昔から稔性のあるものを性、不稔のものを筋と書いてきたが、遺伝子によってはあまり意味のある表現ではない。そのため、燕(筋)黄斑入鍬形葉・・・の筋はあってもなくても良いと思う。

1)葉色:青(y+;省略可能)/黄(y)松島(ym)

2)葉模様:無地(省略する)/斑入(特に白く抜けた部分を持つ場合水晶斑とよぶ)

3)葉性:野生型(省略する)/渦(ct)堺渦(sc)

4)葉の地合:打込(cm)縮緬(cp)等 複数ある場合は列記する。

5)葉癖:林風(B)

6)葉型:野生型(常葉、並葉;省略することもある)/単純な葉型はそのまま呼び、複合葉型の名称があるもの(例:蜻蛉葉(dg)柳葉(mw)/丸葉(co)等/糸柳葉(mw+dl)/針葉(mw+ac))はその名前で呼ぶ。ないものは列記する(蜻蛉笹葉等)。

茎:

正常な蔓は省略し、木立(dw)石化(植物学上では帯化、f)、枝垂(we)、矮性等特殊な茎の性質を持つものだけ記述する。複数組み合わせた場合は列記する。

花:

1)色:a, c, r, caの白色花の変異や、pr, mg, dy, dk-1, dk-2, diの基本遺伝子とそれらの色の濃淡を決めるD, i, fa等の遺伝子の組み合わせによる形容色名を記述する。青、紺、紫、紅、桃、柿、鼠、その他葡萄色、唐桑、団十郎茶等より詳細な色名がある。色名を決めるためには、有用なサイトとして日本の伝統色があるので参照されたい。

2)模様:覆輪(Mr、程度によって爪覆輪、糸覆輪、深覆輪など)、吹雪(Bz)吹掛絞(sp)、刷毛目絞、車絞(Ry)等。地色または模様が白の場合は省略するが、有色の模様の場合は瑠璃地淡紅吹雪のように正確に示す。

3)筒色:省略することが多いが、今後できるだけ記述するように心がけたい。ただし、白色花で筒紅の場合は必ず記述する。野生型の有色筒(筒汚れ)の場合は省略し、筒白(tw)の場合、または筒白と書く替わりに、抜け方を記述する。大きく抜けた陽光抜(け)、くっきりと筒の部分だけ抜けた日輪抜(け)も併記する。獅子咲などの場合は紐白としてもよいかもしれない。

4)花弁の芸:獅子咲きの場合は総風鈴、髭混風鈴、管弁等、車咲牡丹の場合は鳥甲、芯喇叭等、采咲の場合は撫子(弁)、細切など。

5)花弁の様子:獅子咲の場合、玉垂、流星等、采咲の場合、噴水、突羽根等。

6)咲き方:丸咲(野生型で省略することも多い)、獅子咲、車咲、采咲、桔梗咲(桔梗のみ)、星咲(木立など)、切咲、筒咲(南天)等。

7)花弁の重ね:一重(通常省略するが八重咲の多い桔梗渦では記述することがある)、八重pt、今後孔雀性(p)の八重の場合は孔雀八重と書くべきであろう)、牡丹(dp)のいずれかを記述。牡丹の場合は古来度咲と併記したが牡丹の意味であるため不必要な記述である。

8)花の大きさ:通常のサイズの場合は省略しても良いが、洲浜が入っていて大輪や中輪咲になっていたり、燕や姫のように花が小輪咲の場合は、巨(超)大輪・大輪・中輪・小輪を付けるとよいと思う。

 他にも例外的な表現がいくつもあるが、私は古くからの命名法にとらわれることなく、その系統の含んでいる遺伝子がわかり、できるだけ詳細な記述をするようにしていきたいと思っている。