遺伝子リスト
アサガオはほとんどが日本で研究されたため遺伝子名のほとんどに日本語名がある珍しい実験植物である。名称の由来はその突然変異体の表現型を端的に現しているものが多いが、江戸時代からの伝統的な名称を用いているものも多い。例えば立田は5裂した楓様の葉をつけるが、これは楓の名所、立田川にちなんだものである。またアサガオには他の植物と比べて子葉、通常葉、花と多面発現する遺伝子が多いがこれは突然変異体が見いだされやすかったことと関係があると思われる。このような多面発現する突然変異体で稔性のある系統を「性(しょう)」、不稔の系統を「筋(すじ)」と古来読んできており、系統維持には重要な概念であったと思われる。例えば渦性、柳筋のように言う。
以下は主として、今井、萩原の研究に基づいた竹中・米田著「原色朝顔検索図鑑」の記述による遺伝子リストである。一部は私なりに改変・加筆している。現在では突然変異体が失われているものが多く、今井・萩原が研究に用いた系統が残っていないため複数の遺伝子座が同一の表現型を示すものは現存している突然変異がどれに相当するか不明なものも多い。色つきフォントで示した遺伝子には突然変異体の写真がある。m[w]のように表した遺伝子記号はmの対立遺伝子wで本来の表記は肩字(superscript)である。
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遺伝子名 連関群 突然変異体の説明 略称 英語名 日本語名 ______________________________________________________________________________________________________________________________ a-1 a-1 white a-1白 4 白色花、緑茎、花冠は環境によっては、わずかに着色することがある。+[a-1] は+[ca], +[c-1], +[r-1], +[r-2], +[r-3], +[c-2]および+[c-3]とともに花色 表現の基本的補足遺伝子である。 a-1[f] flecked-1 雀斑-1 6 花冠には花青素の小さな条斑があり、花筒は有色。a-1白の対立遺伝子。園芸的 は雀斑または時雨絞とよばれる。 a-2 a-2 white a-2白 5 a-1白と同じ表現型。 a-3 a-3 white a-3白 5 a-1白と同じ表現型。飯田らによってクローニングされ、遺伝子の本体はアント シアニン合成経路に関与するDFR遺伝子である。 a-3[f] flecked-2 雀斑-2 5 a-3の対立 伝子。胚軸にもときどき条斑がある。花に小さな花青素の条斑がで きる。易変遺伝子で全色に転化する。園芸的には雀斑または時雨絞とよばれる。 飯田らによって、En/Spm類似のトランスポゾンであるTpn1が挿入しており、これ が体細胞で転移するため咲き分けることが示された。 a-4 a-4 white a-4 白 1 a-1白と同 表現型。a-1, a-2, a-3 と同義遺伝子。 ab albescent 帯白色 子葉は白っぽく子葉柄も白い。第1葉はとくに白いが、後に出る葉は次第に普 通となり、生育した植物体は正常となる。生存力は幾分低い。稔性は普通。 ac acuminate 南天 4 子葉柄は子葉に付着する部分で太くなり、肩がはっている。葉片は深く裂けて、 先が尖り縁辺は裏にまくれ、しばしば複葉となる。花冠は花筒のやや長い漏斗 状で口径は小さく開き、縁辺がまくれ、ときどき不規則に裂ける。花筒はやや 長い。稔性は低い。 al albino 白子 子葉はほとんど純白で、ごくわずかに葉緑素を含む。発芽後10-14日で枯れる。 am amber 琥珀 子葉は初め鮮黄色で後に淡黄色となり、発芽後しばらくして枯れる。 ar anchor 錨葉 葉柄は葉片の付根で太くなる。しかし屈曲しない。 B-1 Blown-1 林風-1 1 子葉柄が付根で太くなる。葉柄にも同様な特徴が現れる。葉片は手でしごいた ような形となる。 B-2 Blown-2 林風-2 8 前者に似ているが表現型はやや弱い。 B-3 Blown-3 林風-3 5 B-1, B-2と協力して林風葉を表現する。 b-4 blown-4 林風-4 B-1、B-2より表現型ははっきりせず上部の葉では特徴が分からなくなる。 bb-1 bobbed-1 断髪-1 2 植物体に生じる毛が短い。萼の毛は見やすい。 bb-2 bobbed-2 断髪-2 1 毛が短い。 bd broad 太葉 葉の腰が太く、丸葉遺伝子をヘテロにもった並葉に似ているが、葉形が少し乱れ る。 bf buff 淡黄種皮 種皮が淡い褐色。 Bh Bushish 群生葉 3 葉は小さく叢生する。bsで表現される叢生と似ている。 bk broken 破れ 葉は深く裂け花弁も不規則に裂ける。 br brown 褐色種皮 1 種皮がココア色より明るい褐色である。 br[m] brown mutable 易変性褐色種皮 1 br の易変性対立遺伝子。brに対して優性? bu bushy 叢生性 3 葉は小型で草丈はやや低く、弱く叢生する。稔性は普通。 bu bush 叢生 枝蔓が叢生して草丈は約60センチ。稔性は低い。 bv brim vein はだぬぎ 5 翼片の下底で葉脈は縁辺に接している。花はやや大きい。 Bz-1 Blizzard-1 吹雪-1 4 Bz-2, Bz-3 と協力して花に友禅模様をつくる。すなわち濃色地に淡色の条斑、 または淡色地に濃色の条斑を現わし、ときには美しい白斑が濃色地にでる。 Bz-2 Blizzard-2 吹雪-2 10 Bz-1に同じ。 Bz-3 Blizzard-3 吹雪-3 5 Bz-1に同じ。 bz-4 blizzard-4 吹雪-4 劣性の友禅模様。 c-1 c-1 white c-1 白 3 有色茎白花、花筒は常に白い、+[c-1]は+[ca], +[c-2], +[c-3], +[r-1], +[r-2], +[r-3] および +[a] とともに色素発現の基本的補足遺伝子。 c-2 c-2 white c-2白 3 c-1白と同じ表現型。 c-3 c-3 white c-3白 c-1白と同じ表現型。 ca ca white 白種子-1 1 白色花、白種子、緑茎。花筒は常に白。+[ca]は+[c-1] +[c-2]および+[c-3] とともに色素原をつくる。 ca[i] ivory 象牙種子 1 caの対立遺伝子で種子は象牙色。白色花、花筒は白。緑茎。 cb cb white 白種子-2 3 caと協力して白種子をつくる。 cd contorted 捻梅 1 花冠の星状部が葉緑素を含んだ機械的組織を有するため、花が捻れて咲く。 ときには手で開かないと開花しない。 ch chocolate チョコレート種皮 種皮が暗褐色でココアより濃い。 cl curly 縮れ 子葉は小さく葉片は葉柄に直角に屈曲し、葉の着生状態が卍状に捻れたように 見える。完全不稔。 cm-1 crumpled-1 打込-1 1 葉に打込がある。劣性であるが、笹、乱獅子、縮緬、手長牡丹には上位である。 cm-2 crumpled-2 打込-2 9 cm-1に同じ。 cm-3 crumpled-3 打込-3 2 cm-1に同じ。 cm-4 crumpled-4 打込-4 3 cm-1に同じ。 cm-5 crumpled-5 打込-5 2 cm-1に同じ。 cm-5[D] crumpled-5 dominant 打込-5 優性 2 cm-5の優性対立遺伝子。 cn chestnut 淡褐色種皮 8 淡褐色種皮。 co cordate 丸葉 2 心臓形の葉。 co[H] Hederacea leaf ヘデラセア葉 2 アメリカアサガオ(I. hederacea)との交配雑種から移入された。中央の葉片は 深く切込んでおり、翼片はしばしば再裂する。アサガオの野生型葉型と比べて 優性である。 coa cocoa ココア種皮 褐色(br)よりも濃くチョコレート(ch)よりも淡い種皮。 cp crepe 縮緬 2 縮緬地の葉、花筒の折込のために生じる盃状の花には変化が多い。蕾は有毛。 cp[r] reversed 台咲 2 縮緬の対立遺伝子で劣性、花は台咲であるが、葉は縮まない。 cr cream クリーム 3 花はクリーム地で花青素の条斑が入る。胚軸は緑、時に条が入る。易変遺伝子 で全色花の普通に返る。Ry-1でなくRy-2に連鎖する。 cs crisscrossed 石畳 10 花はしばしば花筒の基部まで切れ、細い花弁は互いに交叉する、萼は幅広い。 Cse Curved sepal 曲がり萼 萼片が曲る。アメリカアサガオ(I. hederacea)との交配から移入された。 ct contracted 渦 5 子葉ならびに葉は形詰まって深緑、葉肉厚く脆い。花輪も種子も小さい。花弁 が厚いため長く咲いており二日咲きとも呼ばれる。時おり易変的になって正常 に復帰する。 cu couple 夫婦咲 1 葉腋に2個 花梗を生じる。第2の花は数日おくれて開く。浸透度の低い系統が 多い。 Cy Cream yellow クリーム黄 3 吹掛絞りの花の地色でクリームがかった黄。 D Dilute 減色 6 標準花色のBradley's blueをamparas purpleに減色する。 dc deep-crumpled 深打込 葉の打込がいちじるしい。 de deformed 手長牡丹 3 子葉は丸く肩がこけ、裂片は浅く切込み、子葉柄が長い。葉は肉薄く葉柄が一般て 的に長い。蔓にくせがあって姿が乱れる。花も乱れるが雄蕊、程度が強いと雌蕊 も弁化し八重咲きとなる。現在では絶種となっている。 df deficient 欠葉 子葉にときどき細かい白斑がはいり、そこが不規則に欠如する。葉や花でもしば しば白斑が現われ、そこが欠如する。 dg-1 drgonfly-1 蜻蛉葉-1 6 葉の中央裂片は著しく長くなり、翼片は左右に1ないし2個。花冠は幾分大きく、 曜はまれに5条を越える。現在の大輪朝顔の多くの系統にこの変異が導入されて いる(蝉葉は州浜葉+蜻蛉葉)。 dg-2 dragonfly-2 蜻蛉葉-2 5 dg-1に同じ。 dg-3 dragonfly-3 蜻蛉葉-3 1 dg-1に同じ。 dg-4 dragonfly-4 蜻蛉葉-4 3 dg-1に同じ。蜻蛉葉遺伝子は同義遺伝子である。 dh dwarfish 萎縮 矮性で草丈38cm内外、渦性で子葉は小形、不稔。 di dingy ススケ Ridgwayのmauveのような暗い花色。 dk-1 duskish-1 偽柿-1 10 柿色に似て著しく淡い。最も濃い藍色の場合をRidgwayのvinaceous pupleとする。 duskish-1は少なくとも次のような複対立遺伝子を包括する。high-ruled(線が多 い)、medium-ruled(線が普通にある)、unstable-plain(不安定全色)、stable plain(安定全色)。色々な復帰変異を起す。 dk-2 duskish-2 偽柿-2 5 偽柿-1とは異なっていて柿に似ている。 dl delicate 笹 9 子葉は脈が目立ち裂片は細い。葉は肉薄く、肩が少しこけ、裂片の先が鋭く尖る。 花は細く5裂し、稔性が低い。 dl[m] delicate mutable 不安定笹 9 笹の優性対立遺伝子で、しばしば正常に転化する。 dp duplicated 牡丹 6 花は芯まで弁化しており、花の中に萼をもった蕾が幾重にも存在し、雄雌蕊は完 全に欠如している。開花後内部の蕾が咲くことがある。園芸的には千重咲とか万 重咲と呼ばれるものである。転写因子であるMADS遺伝子族のCタイプに属し仁田 坂によってクローニングされた。ある対立遺伝子にはEn/Spm類似のトランスポゾ ンであるTpn-botanが挿入していた。 dt dotted 斑点花 茎と花に花青素の斑点が現れる。易変遺伝子。 dv defective 栄養不足 種子はなはだしく痩せ、汚れたような淡褐色、乾燥した種子の重さは普通のもの の半分、苗は痩せて小さく形が整わない。生存力は幾分弱く、稔性もやや低い。 dw-1 dwarf-1 木立-1 2 子葉軸は短く、子葉は硬い。蔓は太く、約75cm内外しか伸びない。節間は短い。 花冠は星形。 dw-2 dwarf-2 木立-2 9 木立-1に同じ。 dw-3 dwarf-3 木立-3 5 木立-1に同じ。 dwy dwarfy にせ木立 蔓は短く、節間も短いため葉が密生する。 dy dusky 柿 3 いわゆる柿系統の花色を表現するもので、濃藍に該当するものは、Ridgwayの dark hyssop violetである。+[dy], +[dk-1], +[dk-2],および+[di]は補足遺伝子 で正常をつくる。黄葉(y-1)と強固に連鎖している系統がしばしば見られる。 e extended 全色性花筒 7 淡色性(fainted)に働いて花筒を全色にする。 e-ab albescent-enhanced 帯白色強勢 帯白色(albescent)の働きを強める変更遺伝子。子葉は肉薄く細形となり白さを 増す。 e-cd 1 contorted enhancer-1 捻梅強化第1 捻梅の程度を強める。 e-cd 2 contorted enhancer-2 捻梅強化第2 捻梅の程度を強める。 e-cm crumpled enhancer 打込強化 打込を強化する。 ef early flowering 早咲き 花が時期的に早く咲く。 e-sp speckled enhancer 吹掛絞強化 花の斑点を多くする。 e-Pj Projected enhanced 突起強勢 突起(Projected)遺伝子に働いて、それを強化する変更遺伝子。葉に大きな突起 を生じる。 Ex Expanded 覆輪拡大 5 花の覆輪を拡大し、その結果花の中央に星状の色彩を残す。 f-1 fasciated-1 帯化-1 8 帯化茎に関する遺伝子で、その表現にはf-2, f-3と協力を要する。変異性が高 く時折表現型が普通となる。稔性は低い。孔雀、立田を合わせ持つ系統が多い。 f-2 fasciated-2 帯化-2 8 f-1およびf-3と協力して帯化を生じる。 f-3 fasciated-3 帯化-3 1 f-1およびf-2と協力して帯化を生じる。 fa fainted 淡色性 5 花色を薄める。dk-2( 柿-2)に強く連鎖している。 fd faded 褪色性(暈) 1 胚軸は緑色であるが、下部の地面にはいったところに少し紅味がある。花色は ごく淡色、覆輪に入ると雲輪が現われる。 fd[s] smeary うす汚れ(しみ ) 褪色性(暈)の対立遺伝子。花色をうすめる。強く働くと濃藍をRidgwayのlight violet-blueにする。覆輪があるとその内部に濃輪ができる。 fe feathered 獅子 2 子葉にも葉にもしわがあって卷く。花冠はしばしば裂け、羽毛状の小弁が附属 して奇態を呈する。稔性は極めて低いか、不稔である。現在残っている系統の ほとんどが管弁が折り返った風鈴とよばれる花弁をもち不稔である。 fe[c] creased 乱獅子 2 獅子の劣性対立遺伝子、子葉には少し打込みがあるが葉は殆ど平らか、あるい は軽微な打込がある。花は獅子。外観上生殖器官は正常に見えるが稔性は低い。 絶種。 fo foliate 多葉性 7 頂生花(terminal)の変更遺伝子として働き、程度を強める。頂生花をつけた花 弁は長く伸び、丸形の小さい葉を叢生し、ときどき分枝する。 fol folded 袋咲 蕾が終生開かないし、葯は裂開せずして不稔。 fr featheroid 偽獅子 葉は小さく、生長は悪い。花も小さく羽毛状となる。 ft faint 淡色花筒 5 紅色系の花色に働いて花筒を帯紅程度にする。 g glabrous 不毛性 植物体に毛茸がいちじるしく少ない。 Gb Globose 芋葉 2 葉形は丸味を持ち、翼片の生育が悪い。花輪大、しばしば6曜以上となる。州浜 と組合わさった葉型を大黒葉又は恵比須葉という。 gi giant 巨大型 子葉ならびに葉は大きく深緑、花も大きい。稔性は著しく低い。 h-1 hairl-1 毛蕾性-1 2 h-2およびh-3と協力して蕾に毛を生じる。特に蕾の先端に毛を生じる。 h-1[D] hair-1 dominant 優性毛蕾性-1 2 毛蕾性-1の優性対立遺伝子。 h-2 hair-2 毛蕾性 3 蕾の先端に毛を生じる。 h-2[D] hair-2 dominant 優性毛蕾性-2 3 毛蕾性-2の優性対立遺伝子。 h-3 hair-3 毛蕾性-3 1 蕾の先端に毛を生じる。 h-3[D] hair-3 dominant 優性毛蕾性-3 1 毛蕾性-3の優性対立遺伝子。 hs hard seed 硬い種子 種皮が硬くて、ナイフで傷をつけないと発芽しない。 hw-1 half-white-1 底白-1 5 花筒の下半分が白い。 hw-2 half-white-2 底白-2 4 花筒の下半分が白い。 hw-3 half-white-3 底白-3 花筒の下半分が白い。 i-1 intense-1 濃色性-1 5 花色を濃くする。標準型をRidgwayのdark bluish violetにする。 i-2 intense-2 濃色性-2 8 花色を濃くする。 ig interaxial green 節間緑色 5 胚軸も茎も緑色であるが、枝や花梗の基部は着色し、花は有色。 Lb Large bract 大苞葉 苞葉が大きい。アメリカアサガオ(I. hederacea)から導入された。 Ln Lined 立縞 花はやや淡色地で不規則な濃色の条班が入る。条斑にはいちじるしい変異がある。 lp lilliputian こびと 5 胚軸や子葉ははなはだ短かく、子葉肉は厚く、巻込んで深緑。葉は小形で葉肉厚 く、強く打ち込んでいる。葉柄もまた短い。苗の状態以上には生育しない。 ls lobeless 無裂片 葉は丸く完全な不稔。易変遺伝子で並葉に転化する。 lt-1 light-1 淡彩-1 3 胚軸と茎は淡色、花も淡色。 lt-2 light-2 淡彩-2 8 淡彩-1に同じ。 lt-3 light-3 淡彩-3 淡彩-1に同じ。 m maple 立田 3 子葉は脈目立ち、耳は平行に近くならぶ。葉は深裂して楓の葉に似て、通常5裂 する。花冠は5裂し、雌蕊はしばしば不完全、稔性は低い。 m[p] pine 松葉 3 立田の対立遺伝子。子葉は非常に小さく、葉は糸状で松葉様。絶種。 m[pm] pine mutable 易変性松葉 3 立田の対立遺伝子。子葉は非常に小さく、葉は糸のようである。花は細くさける。 やや易変性で正常に返る。絶種。 m[w] willow 柳 3 立田の劣性対立遺伝子。子葉細く、脈目立つ。葉は柳の葉に似る。花は細く5弁 に切れる。ほとんど完全不稔。易変性で立田に転化し、まれには正常に復帰する。 mg magenta 暗紅 4 胚軸ならびに茎は暗紅色、花は暗紅、詳しくいえば、Ridgwayのrood's violet、 毛茸は白。 mi miniature 燕 子葉は特に小型で丸く肩がこけ、裂片は浅い。葉も小型で花は小さく星咲か5裂 する。花は集まって小さな房状に叢生する。完全不稔。一時絶種となっていたが 戦後再発見された。 mi[m] miniature mutable 易変性燕 燕の易変性対立遺伝子。 Mr-1 Margined-1 覆輪-1 5 覆輪-2および覆輪-3と協力して覆輪を表現する。普通のアサガオは覆輪-2と覆輪 -3を含むから、覆輪花と全色花とは一般に3:1に分離する。 Mr-2 Margined-2 覆輪-2 4 覆輪の表現に補足遺伝子として働く。 Mr-3 Margined-3 覆輪-3 8 覆輪の表現に補足遺伝子として働く。 Mr-4 Margined-4 覆輪-4 1 おそらく覆輪表現の補足遺伝子。 Mr-5 Margined-5 覆輪-5 3 おそらく覆輪表現の補足遺伝子。 Mr-f Margined fluctuated 覆輪変更 3 覆輪の変更遺伝子で、その表現にいちじるしい彷徨変異を起こさせる。 Mr-r Margined reduced 覆輪還元 5 覆輪の変更遺伝子で、覆輪の程度を減退させる。 Mr-r[s] Margined-slight 軽覆輪 5 覆輪還元遺伝子の対立遺伝子で、ごく少量の覆輪を表現する。 nl non-lobe 無翼片 芋葉(Globose)に働いて、ほとんど翼片のない葉にする。葉は長味の丸葉ともい うべき形。 np nipped つまみ曜 曜の頂端がわずかにつまんだようになって止まる。 op oblique-peduncle 花梗斜出 花梗が軸から斜に突出する。アメリカアサガオ(I.hederacea)から導入された 形質。 p pear 孔雀 8 普通は翼片のない長味の丸葉であるが、ときには翼片が発達する。子葉柄に軽 微な林風様の癖がある。花は一般に小さい。立田に対して上位。 p[p] pear-petaloid 八重孔雀 8 孔雀の八重咲で、雄蕊の弁化による。弁化は花糸から初まる。普通の一重咲 孔雀の対立遺伝子。 pb piebald まだら種子 種子は黒いが、ときどき汚れた黄色の斑を生じる。雄蕊不稔-2(sm-2)と連鎖し ている。 pc precocious 早熟 2 早生で花蕾が蔓の基部から発現する。 Pe Pe-peroxidase Peパーオキシダーゼ Pe[lC], Pe[2C]はパーオキシダーゼアイソザイム1C、2Cの構造遺伝子。Pe[O]は 不活性型。 pg pigmy 矮小 子葉は小、きわめて小形の葉を叢生し、茎はほとんど伸長しない。不稔。 Pj Projected 突起 丸葉に働いて小さな翼片様の突起をだす。並葉ではそれほどはっきりとはしない。 pl palmate 掌状葉 2 葉は5裂する。但し花は丸咲きで裂けない。 pp pipy 管咲 花は管のようで小さい。易変性で正常に復帰する。 pr purple 紫 5 花色の濃藍をRidgway cotigna purpleにする。ときどき野生型に復帰する。 pt petaloid 八重咲 雄蕊の弁化による八重咲、弁化は葯から初まり、程度が低ければ葯は花粉を吐 く。草勢が強いときは弁化の程度が強く、成長後期では弁化の程度が弱まり 稔性が高くなる。雌蕊は正常。 py polymorphic 乱菊 1 子葉の裂片は詰まっており丸くなる。しばしば分岐し3葉の子葉となる。葉は 一般に不規則に裂けて先が尖る。花は曜の数が極めて多く摺をとり、しばしば 不規則に切れる。稔性はかなり低い。 r-1 r-1-white r-1白 3 茎は緑で花は白、花筒は着色する場合と白の場合がある。+[ca], +[c-1], +[a], +[c-2], あるいは+[c-3]と協力して花の着色に関係する。 r-2 r-2-white r-2白 r-1に同じ。 r-3 r-3-white r-3白 r-2に同じ。+[r-1], +[r-2]および+[r-3]は補足遺伝子。 re-1 retracted-1 洲浜-1 7 子葉の耳が詰まって丸い。葉の裂片も詰るが、とくに中央裂片は著しい。花輪 は大きく、曜は6-7になる。稔性は低い。現在の大輪朝顔はすべて洲浜遺伝子を 含む。 re-2 retracted-2 洲浜-2 1 洲浜-1に同じ。 rl rootletless 側根不全(無側 ) 子葉は一般に浅く裂けている。蕾の幼いときは側根がないが後には太い曲がった ぎこちない側根を生じる。分離比がいちじるしく低いが、これはrlを含む花粉管 の伸長がおそいためである。 Rt Restricted 毛茸制限 2 萼の毛茸分布を制限する。 Ry-1 Rayed-1 車絞-1 5 花は星状部だけが有色で、他は暈となって褪色している。 Ry-2 Rayed-2 車絞-2 3 放射状に花色を表現するためのRy-1およびRy-1およびRy-3との互助遺伝子。 Ry-3 Rayed-3 車絞-3 4 Ry-1に同じ。 s star 桔梗渦 渦(contracted)に似ているが、詰まる程度はやや弱く花は星咲。子葉。 Sa Striated 刷毛目絞 3 淡色の地に細かい条斑が刷毛をかけたように分布する。条斑はヘテロの方が目立 つ。花筒は白。 sb shrubish 半叢生蔓 5 苗はやや小、葉の裂片は先尖り、葉質は硬い。枝蔓が下部から発生し、幾分叢生 の気味あり。 sc semi contracted 堺渦 2 子葉と葉が幾分厚くてもろい。すべての器官がやや渦性を示し半渦ともよばれ る。葉耳の重なりが渦ほどではない。 sd stunted いじけ 生長がおそくいじけている。茎はいじけ、葉はしわがより、花は不規則に裂ける。 稔度は非常に低い。 Sf Shaded off 縁ぼけ 花色が縁辺に向かってうすくぼける。 s-fm sterile 不稔 葉も花も小さい。生長も悪い。雌雄蕊とも不稔。 sg-1 stringy-1 糸蔓-1 5 茎は長くて糸のようである。めったに側枝を出さない。 sg-2 stringy-2 糸蔓-2 3 sg-1は+[sg-2]と共存 ると並茎 なる。 sh shrubby 叢生枝 矮性で草丈45cm以下、枝蔓は密に叢生する。 si stiff 筋金 5 曜が硬くなったため、花が開きにくい。 St Stellate 星形花色 ホモの覆輪花に働く補足遺伝子。白い部分をひろげ花冠の中央に星形の花色を 残す。 sm-1 male sterile-1 雄性不稔-1 1 葯が不稔、胚珠は正常。 sm-2 male sterile-2 雄性不稔-2 葉が幾分小さく、花姿もまた小さい。葯は通常不稔。 sm-3 male sterile-3 雄例不稔-3 花は小さく、葯は薄く、しわがよって褐色となる。 sn syncotyl 子葉融着 2枚の子葉 融着して 状となる 不稔。 sp-1 speckled-1 吹掛絞-1 3 胚軸と茎に条が現れ、花冠には色素を吹掛けたような斑点ができる。この斑点 の量にはいちじるしい変異がある。アントシアニン合成経路のCHI遺伝子に En/Spm類似のトランスポゾンであるTpn2が挿入していることが飯田らによって 示された。 sp-2 speckled-2 吹掛絞-2 3 吹掛絞-1と同じ。 sp-d speckled- 吹掛絞脱色 3 吹掛絞の変更遺伝子である吹掛絞還元に同じ。しかしほとんど総ての斑点が decolorizer 脱色するから地色だけのように見える。 sp-r speckled-reduced 吹掛絞還元 3 吹掛絞の変更遺伝子。胚軸や茎はだいたい緑であるが、枝や花梗の基部には極 く淡い色がある。花の地色は黄、青白、白などで、それに小点が時折あらわれる。 sph spheloid 丸種子 種子は小さくて丸味をもち、種皮は褐色。 spl pollen-sterile 花粉不稔。 3 花粉不稔。 spr spiral torsion 螺旋卷き 8 茎または葉柄が螺旋様に卷く。 spt septa lobata 7裂葉 立田の変更遺伝子。葉を7裂にす 。 sr-1 side-reduced-1 鼻葉-1 5 葉の翼片だけが詰り丸味をもつから葉全体が鼻形となる。 sr-2 side-reduced-2 鼻葉-2 3 鼻葉-1と同じ。 st-1 striped-1 条斑-1 6 淡い地色の花に条斑が不規則に現れる。 st-2 striped-2 条斑-2 8 st-1に似ている。 st-3 striped-3 条斑-3 3 st-1, st-2に似ている。 su-Cy Cream yellow- クリーム・黄の 3 クリーム・イエローの色を抑圧して白の地色にする。 suppressor 抑圧 su-dg dragonfly-suppressor 蜻蛉葉抑圧 7 蜻蛉葉に働いて正常の三尖葉にする。 su-g glabrous suppressed 不毛性抑圧 不毛性に働いて正常の有毛葉を生じる。 Su-Mr Margined-suppressed 覆輪抑圧 5 覆輪の表現を抑制し全色花を生じる。 su-nl non-lobe-suppressed 無翼片抑圧 芋葉と無翼片(non-lobe)の存在において無翼片に働いて正常の芋葉にもどす。 su-tw-1 tube color- 花筒色抑圧-1 2 花筒色抑圧-2と協力して花筒色の表現を抑え白い筒色にする。 suppressor1 su-tw-2 tube color- 花筒色抑圧-2 花筒色抑圧-1に同じ。 suppressor2 sw shallow 浅い裂片 子葉は丸形で裂片の切込みが浅い。不稔。 sz-1 size-1 大輪性-1 茎葉は正常であるが、花が大きくなる。 sz-2 size-2 大輪性-2 5 大輪性-1に同じ。 t terminal 頂生花 1 花梗は長く伸び、丸形の葉と蕾とを着生する。頂生花には苞葉がない。腋生花 には小さい苞葉がある。頂生花が先に咲く。 ta tardy のろま 1 初めの頃の花蕾は総てしぼんでしまう。後には開花する。 tg tinged 薄色 3 花色を極く淡い色にする。 tl trilobata 3尖葉 立田の変更遺伝子。立田葉を3尖葉にする。 tw-1 tube-white-1 筒白-1 5 花筒を白にする。 tw-2 tube-white-2 筒白-2 3 花筒を白にする。 tw-3 tube-white-3 筒白-3 4 花筒を白にする。 v-1 variegatedd-1 斑入-1 1 葉に白斑を現し、茎に白条を生じる。子葉にもときどき白斑が出る。種皮は 黒褐色で背に黒縞がある。 v-2 variegated-2 斑入-2 2 斑入-1に同じ。 v-3 variegated-3 斑入-3 3 斑入-1に同じ。 v-r variegated-reduced 斑入還元 葉に淡緑色の細かい班がある。班入はときどき網状となる。班入に働く変更 遺伝子。色素体の突然変異による。 vi virescent 浅緑色 子葉と葉は青白く、生育がおくれ、生存力が弱い。栄養不良のため、花も葉も小。 vt velvet 長毛種皮 種皮に長毛を生じる。 Wd White-dominant 優性白色 花色を抑圧して白色とする。 we weeping 枝垂れ 茎は卷かず、植木鉢から直角に下向し、負の屈地性を失っている。戦後、織家氏 によって大輪咲き(州浜)の天津(青斑入蝉葉)から発見された。 wl wrinkloid しわ咲 花にしわがよるが、程度は著しくない。 wr wrinkled 縮咲 花は縮咲で星形を呈し、稔性が低い。易変性でなみに転化する。 xt xanthic 鮮黄子葉 子葉が鮮黄色で、後淡黄色となる。ときに緑班の入る易変遺伝子。普通は葉を 出さないで枯死するが、緑班が生長点部にあると生育する。 y-1 yellow-1 黄葉-1 3 葉、茎が黄緑色。 y-1[m1] yellow mutable-1 松島-1 3 黄葉であるが、体細胞突然変異のため黄葉に緑色の点や班ができる。y-1の対立 遺伝子。易変性で正常葉に転化する。 y-1[m2] yellow mutable-2 松島-2 3 y-1の対立遺伝子。松島-1より易変性が強い。 y-2 yellow-2 黄葉-2 3 葉、茎が黄緑色。 ye yellowy 偽青葉 子葉は黄緑色でしばしば緑班をもつ。若い葉も黄緑色で緑点をもつが、古くな ると緑点が拡大して並葉のようになる。易変性。