アサガオの花色

白色花

まずアントシアニン合成経路に関わる遺伝子がどれか一つでも欠損すると白色花を咲かせる。そのため、古い文献において最初に見られた突然変異が白色花であった。これに関与するような遺伝子にはacrcaなどが知られておりそれぞれの遺伝子の発現様式・部位が異なるため、花冠、花筒、茎、種子などの色が異なる。特にcaでは全て着色しない。

白色花には大きくわけて4つの遺伝子のグループが知られている(遺伝子リスト参照)。

遺伝子名

花冠の色

花筒の色

茎の色

種子

知られている遺伝子座

r

白色(かすかに着色)

白または着色

緑色

黒色

r-1, r-2, r-3

a

白色(かすかに着色)

白または着色

緑色

黒色

a-1, a-2, a-3, a-4

c

純白

白色

着色

黒色

c-1, c-2, c-3

ca

純白

白色

緑色

白色

ca (cb?)

ca  c-1 a-3 r-1

紫と暗紅

白色花で無い場合の基本的な花色は紫(purple; pr)暗紅 (magenta; mg)の組み合わせで決まっている。両方の遺伝子が野生型の場合青色となり、purpleの突然変異では紫色の花、magentaでは暗紅〜紅色の花を咲かせる。また両方欠けると紅から桃色の花になる。

青-野生型花色 (pr+ mg+)  紫 (pr)  暗紅 (mg)   淡紅 (pr mg)

暗色系の突然変異

アサガオには、柿色、鼠色、茶色などくすんだ渋い味わいのある色のものがある。昔は唐桑刷毛目絞の花を最高の花色としたくらいである。これに関与する遺伝子は今まで、柿 (dusky; dy)偽柿1(duskish-1; dk-1)偽柿2 (duskish-2; dk-2)すすけ(dingy; di)の4つが知られている。暗色系の二重変異はおそらく同一経路の変異であり上流に位置する突然変異遺伝子の形質が発現するため、2重変異がないとすると白以外の花色の基本色は20通りとなる。それを以下の表にまとめた。

花色名称

突然変異遺伝子の組み合わせ

日本語

英語

mg

pr

dy

dk-1

dk-2

di

blue

+

+

+

+

+

+

purple

+

pr

+

+

+

+

暗紅

magenta

mg

+

+

+

+

+

red

mg

pr

+

+

+

+

暗い灰色み青(黒鳩色)

slate

+

+

dy

+

+

+

暗い赤み紫(紅鳩色)

plum

+

pr

dy

+

+

+

赤褐色 I(柿茶色)

terra-cotta I

mg

+

dy

+

+

+

赤褐色 II(柿色)

terra-cotta II

mg

pr

dy

+

+

+

くすんだ紫青

dutch blue

+

+

+

dk-1

+

+

ピンクよりの紫

vinaceous purple

+

pr

+

dk-1

+

+

明るい紫みピンクI

orange vinaceous I

mg

+

+

dk-1

+

+

明るい紫みピンクII

orange vinaceous II

mg

pr

+

dk-1

+

+

灰色

gray

+

+

+

+

dk-2

+

暗い灰色み茶色

drab

+

pr

+

+

dk-2

+

紫みピンクI

vinaceous I

mg

+

+

+

dk-2

+

紫みピンクII

vinaceous II

mg

pr

+

+

dk-2

+

緑み青

motmot blue

+

+

+

+

+

di

明るい藤紫

wisteria violet

+

pr

+

+

+

di

うすいラベンダー紫

lavender violet

mg

+

+

+

+

di

明るい紫

mauve

mg

pr

+

+

+

di

以下の花はdi 以外、pr mgのバックグラウンドである。

柿 (dy)   偽柿1(dk-1)    偽柿2 (dk-2)    すすけ(di)