蔓の巻性,頂芽優性など
Copyright 1998-2022 米田 芳秋
植物は光合成を行った独立栄養方式で生活している。一定の場所に定着して光合成専門の器官である葉を展開するという体制をもっている。動物のように食料を求めて動き廻ることはないので,一般的に動きの少ない生活をしている。しかしアサガオの蔓のように他物に巻きつく回転運動をしたり,食虫植物の一部には俊敏な動きによって動物を捕らえるものもある。このような植物の運動がどうして起きるか昔から多くの人が興味をもってきた。
植物の蔓の巻き方については慣習的に(Sachs, 1882),右下から左上へ巻きつくものを右巻,左下から右上(上から見て左巻)へ巻くものを左巻と呼んでいる。スイカズラなどは右巻で,アサガオ,ヒルガオ,インゲンマメなどは左巻である。巻性について木原均氏は逆の表現をした方がいいと提案している。
蔓が支柱に接触した時になぜ巻き始めるのかというしくみについては,まだ不明の点が多く,ここでは文献をあげるにとどめたい。
講談社パノラマ図鑑アサガオ より
頂芽優勢とは主茎の頂芽が活発に伸びている時に側芽(腋芽)の発達が抑制される現象である。一端頂芽が傷ついたり除去(摘心)されると側芽が伸び始める。頂芽で生産されるオーキシンがかかわっていると考えられている。
一般的な解説書
- ダーウィン著 渡辺仁訳 (1991) よじのぼり植物 ーその運動と習性ー 森北出版
- (Darwin, C. (1875) On the movements and habits of climbing plants)
- ダーウイン著 渡邊仁訳 (1987) 植物の運動力 森北出版
- (Darwin, C. (1882) The power of movement in plants)
- ザックス著 渡辺仁訳 (1987) 植物生理学講義 森北出版
- (Julius von Sachs (1887) Lectures on the physiology of plants(translated by Ward, M.) Oxford, Claredon Press)
- 木原均 (1977) 左右性 木原均監修・山口彦之編 植物遺伝学 IV. 形態形成と突然変異 pp.54-79
- ポール・サイモンズ著 柴岡孝雄,西崎友一郎訳 (1996) 動く植物 八坂書房
文献
- Imai, Y. (1927) The right- and left-handedness of phyllotaxy Bot.Mag.Tokyo 41:592-596.
- Prasad, T.K., Sack, F.D. and Cline, M.G. (1988) Effects of shoot inversion on stem structure in Pharbitis nil. Amer.J. Botany 75: 1619-1624.
- Silk, W.K. and Hubbard, M. (1991) Axial forces and normal distributed loads in twining stems of morning glory. Journal of Biomechanics. 24: 599.
- Prasad, T.K., and Cline, M.G. (1987) Gibberellin-enhanced elongation of inverted Pharbitis nil shoot prevents the release of apical dominance. Plant Sci. 49: 175-179.
- Prasad, T.K., Li, X. and Abdel-Rahman, A.M. (1993) Does auxin play a role in the release of apical dominance by shoot inversion in Ipomoea nil? Ann. Bot. 71: 223.
- Cline, M., Wessel, T. and Iwamura, H. (1997) Cytokinin/auxin control of apical dominance in Ipomoea nil. Plant & Cell Physiol. 38: 659.
Edited by Yuuji Tsukii (Lab. Biology, Science Research Center, Hosei University)