Encyclopedia : Physiology

アサガオ花のしおれ

Copyright 1998-2022 Yoshiaki Yoneda


昔から露と同じように朝顔の花もすぐに萎れるのではかなさの象徴とされている。花が萎れるしくみはどうなっているのだろうか。カーネーションでの実験によると, 花が萎れるときには花弁からエチレンが発生する。エチレンは植物ホルモンの一つで, 果実の成熟や落葉, 落花など植物組織の老化にかかわっている。最近エチレン生合成経路が明らかになってきた。カーネーションの花を長持ちさせるには, 硝酸銀溶液を花に直接散布するか, 切り花の切り口からチオ硫酸銀(STS)溶液を吸わせてやるとよいという。また, 2, 5-ノルボルナヂエン(NBD)を与えても花弁の萎れを抑制することができる。これらはエチレンの生産を抑制するからである。アサガオに近縁のSorairoasagaoで, 花が萎れる際にエチレンの発生がみられること, 外からエチレンを与えると萎れが早く始まることが分かったのは 1970 年代である。

静岡大農学部の兵藤宏研究室での最近の実験によると, アサガオの品種「紫」を用い, 開花したばかりの花を切り取ってフラスコに挿しておくと, 6〜8 時間後に萎れ始め, この際エチレンが発生していることが分かった。おもしろいことに, NBD を与えると, 開花してから 20 時間以上も萎れない状態のまま咲くとのことである。NBD は実用上の問題があるが, 適当な萎凋抑制作用をもつものが見つかれば, 大輪アサガオなどに散布処理して観賞時間を長くすることも可能であろう。


文献
  1. 島津斉徳・西村恒雄 (1950) 朝顔の開花及び凋花, 第一報. 茨城大農学部学術報告 7: 9-14.
  2. 島津斉徳・西村恒雄 (1963) 朝顔の開花及び凋花, 第四報. 茨城大農学部学術報告 11: 13-16.
  3. Kende, H. and Baumgartner, B. (1974) Regulation of aging in flowers of Ipomoea tricolor by ethylene Planta (Berl.). 116: 279-289.
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Edited by Yuuji Tsukii (Lab. Biology, Science Research Center, Hosei University)